2024.08.13投資、運用 |
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年金を放置しない!スマートな大人の資産管理の心得
近年、企業年金を放置したままにしている人が増加しています。企業型確定拠出年金だけで言えば、その総額はおよそ2800億円。老後の為に、長年積み立てられた大切な資産なのに、なぜこのような状況になってしまっているのでしょうか?
また、私たちはどのように年金資産と向き合っていくべきなのでしょうか?
本コラムでは、企業年金の重要性と適切な向き合い方について詳しく解説していきます!
もくじ
1.企業年金放置の実態
企業型確定拠出年金や厚生年金基金、確定給付年金などの「企業年金」。会社で働く方々が、自分自身または会社のお金で老後資金を準備するための制度です。今、その大切な老後資金を、多くの方が放置していることが問題になっています。
例えば、企業型確定拠出年金に加入していた方の中で、転職や退職後に企業型確定拠出年金の年金資産の残高の移換手続きを行わず、国民年金基金連合会に移換された人は、累計で118万人。その年金資産の額は、約2800億円にのぼります(令和5年5月17日国民年金基金連合会「社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 ヒアリング資料」より)。
また、厚生年金基金、確定給付年金などの制度がある会社を退職し、企業年金連合会の通算企業年金に移換した後、年金受給開始年齢になっても、住所不明で通知が届かない人(請求書不達者)は 64.8万人いるとのことです(2024年3月末時点。2024年8月企業年金連合会ウェブサイト<https://www.pfa.or.jp/gaiyo/hokoku/hokoku01.html>より)。
2.なぜ企業年金が放置されるのか
会社員一人ひとりに紐づく企業年金が、その人から離れて忘れられたり放置されたりするきっかけのほとんどは、「会社を途中で退職する」ことです。
企業型確定拠出年金であれば、転職先が企業型確定拠出年金制度を整えていた場合は移換するかどうか、扱っていない場合や無職になる場合は、iDeCoや通算企業年金など、何に切り替えるかなど、検討の上、手続きをすることが必要です。
また、確定給付企業年金や厚生年金基金などの場合は、中途退職後に年金で受け取るか選択一時金を受け取るかを決める必要があります。
入社した会社で定年まで勤めあげることが前提であれば、企業年金が放置されてしまうことはないでしょう。ですが、転職が珍しいことではない昨今において、この問題が発生しやすいということは想像に難くありません。
従業員が退職する時は、引き継ぎや新しい環境への準備など、目の前の作業に追われてしまいます。また、企業年金の仕組みや重要性について十分な知識がないケースもあるでしょう。さらに、確定給付企業年金や厚生年金基金などにおいては、年金として受け取る場合は原則65歳からですので、2、30代の頃にこの手続きをされた場合、時が経つにつれて忘れてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
3.転職時・転職後の適切な手続き
企業年金を適切に管理するためには、転職時や転職後の手続きが重要です。当事者(従業員)と企業の人事担当者それぞれが、以下のような対応を心がける必要があります。
● 当事者(従業員)の場合
☑ 退職時に人事部門から企業年金に関する資料を確実に受け取る
☑ 新しい勤務先での年金制度を詳しく確認する
☑ 前職の年金をどの企業年金制度に移換するか、慎重に検討する
☑ 選択した方法に応じて、必要な手続きを期限内に確実に行う
☑ 不明点があれば、専門家や年金事務所に相談する
● 人事担当者の場合
☑ 退職者に年金関連の情報を明確かつ丁寧に伝える
☑ 転入社員の前職の年金について確認し、必要な手続きをサポートする
☑ 社内での年金教育を定期的に実施し、従業員の理解を深める
☑ 年金に関する質問や相談に対応できる体制を整える
4.不明な年金資産の確認方法
過去の勤務先での年金資産が不明な場合でも、以下の方法で確認することができます。少しでも心当たりがあれば、是非確認してみましょう。
● 厚生年金基金または確定給付企業年金のある企業を中途で退職された方
企業年金連合会のウェブサイトには、未請求の企業年金を検索できるサービスがあります。厚生年金基金または確定給付企業年金のある企業を中途で退職された方の年金記録を、企業年金連合会が預かっているかどうかをメールで確認できます。
● 企業型確定拠出年金を利用していた会社を退職し、6か月以上何も手続きをしていない方
企業型確定拠出年金に加入していた方が離職・転職などによって「加入者資格」を失うと、他の確定拠出年金制度などに資産を移し換える必要があります。6ヶ月以内に何も手続きをおこなわなかった場合には、その方の資産は国民年金基金連合会に移され、再度年金制度を利用する際にはお手続きが必要です。こちらのサイトで、お手続きの方法をご確認いただけます。
● 前職の人事部門に直接問い合わせる
退職した会社の人事部門に連絡し、年金に関する情報を請求することができます。
● 年金事務所で年金加入記録を確認する
最寄りの年金事務所で、自身の年金加入履歴を確認することができます。
5.自分の人生を自分で作る、スマートな大人になろう
右肩上がりの経済成長の時代は終わり、働き方や価値観が多様化する中、自分の人生を会社任せにすることが難しい時代になりました。
私たちは、目の前の仕事をこなすだけではなく、「自分の人生をどのように生きるか」という長期的な人生設計ができる力が必要です。これには、お金の流れや運用について理解し、適切に管理できる能力や、将来起こりうるリスクに備えるリスク管理能力などが挙げられるでしょう。
自分が現在保有する資産や将来の年金などをきちんと把握し、今を充実させながら将来に向けてもコツコツと準備することで、老後の生活に大きな違いをもたらします。
今一度、自分の年金状況を確認してみましょう。わからないことがあれば、専門家に相談するのも良いでしょう。「今」だけでなく「未来」の自分にも目を向け、適切な行動を取ることが重要です。
年金は遠い将来の話に思えるかもしれません。ですが、年金の管理は単なる事務手続きではありません。それは、自分の人生を大切にし、将来の自分に対する責任を果たす行為なのです。自分の年金と向き合い、豊かな老後への第一歩を踏み出しましょう。
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